児童養護施設に招かれて

 2月に愛知県のとある児童福祉施設を訪問する機会をいただき、あくせす・ぽいんとの代表として視察させていただきました。児童福祉施設とは、「国または都道府県が設置する、児童および妊産婦の福祉を図るための施設」(大辞林)ですが、そのうち今回訪れたのは、児童養護施設です。

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 現在、児童養護施設がどのような環境に置かれているのか、どのようなことが問題となっているのかについて、改めて調べてみるため、厚生労働省の『社会福祉施設等調査』を調べてみました。最新版の平成23年度の調査データを概観してみると、現在、児童養護施設は全国で578施設(公営:15、私営:563)設置されていると報告されています。この数をどう解釈するか意見が分かれるところですが、48都道府県の数で単純に割り算すれば、各都道府県に12施設が設置されていることになり、養護を必要とするかなり野の数の児童がいることが推察されます。

平成23年児童養護施設数等調査

 また、近年、「児童養護施設に入所している発達障害を有する子供が抱えている困難・ニーズやそれに対する支援の実態を明らかにするために、児童養護施設職員の調査」がなされていることを文献上で知ることができました(※)。その調査は、全国にある児童養護施設11施設に聞き取り調査(構造化面接法)を行い、発達障害児の入所実態調査を前提に、子供たちが直面している以下の点について、どのように施設側が対処しているのかを明らかにしようとした文献です。

(1)日常生活の困難
(2)食事に関する困難
(3)睡眠の困難
(4)対人関係上の困難
(5)暴言
(6)暴力
(7)異性関係・性的問題行動
(8)触法行為
(9)指導上の困難

 共通する結論として、関係各位の理解と連携が重要であることが指摘されるのですが、結局は、前途半ばという感が否めないところです。それだけ、まだまだ社会全体が取り組むべき問題として一般化されていないのでしょう。ただ、それら問題は半永久的に考え続ける問題でもあり、正直なところ、対症療法的な方法しか無いということなのかもしれません。理論と実際との乖離はどうしても生じてしまうところですが、少なくとも、あくせす・ぽいんととしては、支援対象の児童養護施設の状況を常に追いながら、どうすれば受け入れ先の役に立つことができるのかを前提に、本の寄贈活動を行っていく態度が大切だと考えたいと思います。上記問題点について触れている絵本や物語のセレクションをし、どのような本の世界が利用者・読者に有意義なのか、100%の正解は無いにしても、考え続けながら支援活動をする行為自体の価値を信じて、関係各位と協力しながら頑張っていきたいと思います。(*´∇`*)

※横谷祐輔ほか.「児童養護施設における発達障害児の実態と支援に関する調査研究ー児童養護施設の職員調査からー」.東京学芸大学紀要:総合教育科学系Ⅱ. Vol.63, p.1-20(2012)